二階の他人 山田洋次

二階の他人
デビュー作はクリエイターのその後の全てが集約されている。というのはよく言われることです。
黒澤明監督「姿三四郎」しかり、宮崎駿監督「未来少年コナン」しかり。
この「二階の恋人」わずか60分足らずの長さですが、山田監督後の数々の名作の萌芽を早くも感じさせるのでした。
 まず設定、若い夫婦があちこち工面してやっと念願のマイホームを購入。ローンの返済の足しにと二階を貸すことにします。
 この若いサラリーマンの夫婦の庶民的な悩みがきめ細やかに描かれています。これが後の「下町の太陽」や「家族」のような、ドキュメンタリータッチのリアルな庶民の生活という路線につながっているような気がします。「男はつらいよ」のさくら夫婦がそのママ演じてもおかしくないような。生活に根ざした感じ。
 この夫婦の家の二階に間借りする住人が素性のあやしい人ばかり。世間知らずで、善良なことをいいことに家賃を滞納したり、犯罪暦があったり。
 家を貸すのがローンの返済にあくせくする若い夫婦だから共感が得られます。金に余裕のある資産家だったら、観客に反感をかわれ、逆に借りてる方に共感していたかっも知れません。
 これが、喜劇色が強かった頃の山田監督だったらどう味付けしただろうと妄想が膨らんでしまいます。二階の住人が寅さんだったら。はたまたハナ肇扮するバカだったら。もっとひっちゃかめっちゃかになっていたかも。
 山田監督には二つの軸があって、それは現実という日常を淡々と生きる市井の人々の姿をありのままに描く。そこに、娯楽性を持ち込むのは、寅さんをはじめ、庶民の日常からはみ出した人々が現れ、平穏対破天荒の対立が巻き起こる。
 今回その対立軸の橋渡しするのは主人公のサラリーマン小坂一也さんの母の高橋とよさん。小津安二郎作品の常連です。
 Wikipediaで検索したら、「二階の他人」の出演には入っていなかったので、追加しておきました。
 主人公のお兄さんの嫁と喧嘩して、小坂さんの家に転がり込んで、怪しい二階の住人と仲良くなってしまって、主人公夫婦を困らせます。
 夫婦は家賃を払わない間借人に早く出ていってもらいたいのに、お母さんはそれを妨害。 お母さんのおかげで話はややこしく。ドラマとしてはおもしろくなっていきます。
 稼ごう稼ごうと思って始めた、二階の間借りなのに思いもかけないトラブルに巻き込まれて、夫婦は奔走しながらも心がすれ違っていきます。同じ屋根の下に住みながら、いつも一緒にいても考え方や捉え方が微妙に違う。些細なことでひびが入ってしまう夫婦だけならず、人間関係なんてそんなものかも知れませんね。
 そして、あっという結末に……それは見てのお楽しみ。小品ですがいつまでも心に残る佳作です。
 

この作品はDMMでレンタルいたしました。




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