893愚連隊

以前読んだ「松方弘樹 無冠の男」で紹介されていたので視聴しました。
二世スターでデビューこそ華々しくしたものの、後はなかずとばずで、端役に甘んじていた松方弘樹がそれまでのイメージをかなぐり捨てた会心作。
 京都の町を無許可でオールロケーション撮影されたらしい。
 その時の町の躍動感がいきいきと映し出されている。
 当時はまだ、鶴田浩二や高倉健が大看板の時代、任侠でも主人公は正義の味方。
 私が子供の頃の日曜祭日の昼間に放送された映画のほとんどが任侠映画。
 完全に健さんは正義のヒーローだと疑わなかった。

 しかし、松方弘樹はじめこの映画の愚連隊はノーモラル。
 本当に現実にいる悪党。
 弱者はいじめ、女は騙し、利用する。
 この時点で、この主要メンバーの誰にも共感できないのだった。
 とはいいながら、人間にはなんの制約もなしに欲望の限りを追求したいという密かな願望がある。なので愚連隊たちのやりたい放題を見て、密かにうらやましいなあとも思う自分もいたりする。

 本物のヤクザとは力が違いすぎて、勝負にならないので、ヤクザの眼をかすめて、せこく生き残っていく。

 ものすごく強いわけではない。むしろ自分たちに近い。そんなやつらがヤクザを尻目に稼ぎを生み出す。
 ラストで主人公松方が言った
まさに「ネチョネチョ生きていく」連中なのだ。

 「自分たちが楽しければそれでいい」
 そんな男たちの価値観を揺れ動かす事件が起きる。
 連中の先輩格が、ヤクザの利益を掠め取って殺される。
 この天知茂さんが主役のお株を奪うほどの存在感と生死をかけた一か罰の大勝負に出て破れる。
 これがまた悲壮美があっていいんだな。
 通常の映画ならこっちが主役でしょ、っていう展開なのだが、今まで安全な商売しかして来なかった愚連隊がヤクザを相手に勝負に出る。
 まともなら勝てない。だったらこっちは頭を使うんや。
 で、愚連隊たちはラストどうなるのかは見てのお楽しみ。
 あと、近藤正臣さんのスケコマシの大学生のキャラクターも秀逸で印象に残った。
 松方さんと同じ年だが、とてもそうは思えない童顔ぶりであった。
 「柔道一直線」で三十過ぎても高校生をやるわけだ。
 あ、後全く関係ないが、
私たちの年代で「893愚連隊」近い映画があった。
柴田恭兵「チ・ン・ピ・ラ」だった。
 893の映像もヌーベールバーグ的に最先鋭だったが、チンピラもおしゃれな映画だった。
 原作の脚本が「竜二」の金子正次。
「竜二」は、カタギになるのをめざすと言う今までに無かった新機軸で、人生の哀歓たっぷりのガード下が似合う映画だった。
 のだが、同じ川島透監督にもかかわらず、ものすものすごく明るい色調で、スタイリッシュな作りだった。のちの「野蛮人のように」もおしゃれな作り。なんか同じ監督とは思えない。
 その川島透監督、もう何十年も新作が見られないのは残念だ。
 ま、柴田、ジョニー大倉ちょっとチンピラにしては年代が上だった。
 もう三十すぎとったからね。
 
 で、本題に戻るが、
「893愚連隊」の名台詞
「ねちょねちょ生きる」
が本当に身に染みる今日この頃。
どんな生き方にせよ、
 生きるが勝ちだ。
 生き抜いてみせるぜ、あの愚連隊と同じように……
 なぜか元気をもらえた映画だった。

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