伊丹十三監督作品vs東映実録物意外な共通点

松方弘樹さんの生前のインタビューをまとめた無冠の男 松方弘樹伝

この本に影響を受けて埋もれた松方弘樹主演作品を立て続けに見ました。

松方さんが活躍した東映作品に実録シリーズというのがあります。

今回見たのがこちら

実在の脱獄囚をモデルにした刑務所と脱獄犯の実態を描いたものです。

当時大ヒットしたスティーブ・マックイーン主演

パピヨン-製作30周年記念特別版- [DVD]に触発されてつくられたものらしいんですけど……。

本家パピオンは脱獄に執念を燃やす男を淡々と描いていた印象なのですが、

こちら「広島脱獄囚」は一つ一つのエピソードは事実を元にしているのかもしれないけど、

ワンシーンワンシーンおもしろ見所を強調しているため。

主人公の心理とかはおざなり、ごった煮的なテイストになっております。

1時間半どんな人でも飽きずに見ることができる娯楽作です。

「パピオン」とは似ても似つかない、オリジナルな作品になりました。

この実録シリーズをずっと見ていて、

ふと気がついたのが、

とある日本映画界に一時代を気づいた監督の作品群に似てるということです。

勝手な個人的な印象ですから無責任なんですけど……

その監督の名は「伊丹十三」です。

 

伊丹十三とは

1980年代から1990代にかけて、次々と作品をヒットさせた名匠でした。

伊丹十三さんはそれまでは俳優・エッセイスト・コメンテーターとして活躍されていました。

「お葬式」お葬式<Blu-ray>で突如、その才能を開花。

伊丹監督が活躍した時期がちょうど十代二十代だったので、格好良くて憧れでしたね。

映画の封切りと同時に「お葬式日記」など、

かならずメイキングの様子を描いた日記とシナリオを載せた本を出版していました。

当時、まだメイキング映像とかがなかった時代。

教則本のような映画についての本はありましたが、監督自らが映画の裏側についた本は皆無でした。

この本と映画を見て、映画監督に憧れた人が何人いたでしょう。

伊丹十三監督作品の特徴 うんちくたっぷり

デビュー作「お葬式」はずばりお葬式についての映画。

この映画を見たらお葬式の段取りの一部始終がわかるというものでした。

当時、映画館が斜陽で全然お客さんがいなかった時代。

映画を見たら1つ賢くなっているというhow to映画だったのです。

伊丹十三さんの映画だけは見に行くという人も多かったはず。

以後、

「タンポポ」→食 「マルサの女」→脱税 

「ミンボーの女」→民事介入暴力 

「スーパーの女」→スーパー

などなどそのほとんどが情報たっぷりのおもしろくてためになる映画だったのです。

伊丹十三作品 実録シリーズ共通点

徹底した取材 「仁義なき戦い」の脚本家笠原和夫さんは現地で徹底取材を行い。

リアル感が細部にあふれています。

例えば、子指を詰めるシーンで小指が飛んで鶏小屋に入ってみんなで探すとか、

食い詰めてしまい犬の肉を鍋にして食べるとか。

実際に現地に行って調べてみないとわからない、嘘のような本当の話を巧みに表現しました。

伊丹作品も同様、現場でしか知り得ないエピソードを描くと、単なる定型に陥らず、映像に生々しさが加わるんのです。

きれい事を廃し人間の本性・欲望を直視。

「実録」シリーズの前の鶴田浩二・高倉健・藤純子さんが活躍した任侠物の主人公は

弱きを助ける正義のヒーローでした。

ところが実録シリーズは生身のアウトローで、金・権力・女のためなら手段を選ばない。

かたや伊丹作品に登場する人物はアウトローではないものの、人間が本来もっている欲求には忠実です。

ドラマに登場する人物のように愛や正義理想などもっていない現実を生きる生身の人間なのです。

ワンシーンワン面白主義

「マルサの女」の場合テーマは脱税でした。メインストーリーは

山崎努扮する事業家の脱税を宮本信子扮する国税庁の調査官が追い詰めていくもの。

ですが、あちこちに脱税の手口が紹介されていきます。

ので、必然とストーリー性よりもワンシーンワンシーンのインパクトが強いんです。

地味なシーンの積み重ねによって、1つのストーリーをつくりあげるのとは違う映像作りです。

実録シリーズもワンシーンワンシーンがインパクトがあります。

当時大部屋俳優だった無名の俳優さんが短い出番の中でもどうにかしてめだってやろうと思って、

ささいなシーンでも身体を張った熱演をしたのでした。

大部屋の中から、次々とスターになっていきました。

かたや伊丹監督もちょっとしたシーンでもインパクトがあって目立つので、

有名な俳優がこぞって出演していました。

情報が主役――かすむ主人公

ごった煮的感覚な伊丹映画と東映実録シリーズ。作品そのものが主役という感じ。

主演俳優が一人で大活躍するっていう感じではありません。

伊丹映画のほとんどが夫人の宮本信子さんですが、

どの役も映画のテーマの異常性を際立たせるため普通の人として登場します。

「仁義なき戦い」では菅原文太さんが主演でした。

が、主人公  は抗争の渦中には獄中で蚊帳の外でした。傍観者的な立場で全体を静観しているのです。

伊丹映画の宮本信子さんも大きなテーマの道案内的な役割でした。

宮本さん、実録シリーズに出演した俳優さんそれぞれ魅力的でしたけど、

「マルサの女」が印象的です。

それ以上に作品の中身の特異性が際立つんですよね。

リアルなんだけど滑稽な感じ

欲望に忠実な人の行動は極端になるとどこかユーモラスで、かわいげがあるんですよね。

たとえ世間から見たら極悪人でもね。

おまけ・もう一人金に振り回される人々を描いた作家

この文章を書いているうちに

もう一人のクリエイターの存在を思い出しました。

「ナニワ金融道」

を作った漫画家・青木雄二さんです。

金にまつわる欲望渦巻く社会を独特なフリーハンドの細かい描写で描きました。

「ナニワ」伊丹作品同様読んだら少し賢くなった気がするためになる漫画でした。

くしくも伊丹十三さんと活動時期が重なるんですね。

当時はトレンディードラマ全盛。

バブリーな時代背景に、キラキラのドラマチックな恋愛。

そんなのりについていけない人に生々しい人間の真の姿を描き、

そこから立ち上がる人間ドラマを描いていました。

まとめ

東映実録シリーズ、伊丹十三、青木雄二 今見ても色あせない作品です。

しかも、築き上げたベースをなぞっている作品が現在でも次々と作られています。

偉大な足跡を残してくれました。

永遠に!




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