オタク視点で上原正三さんの話題作「キジムナーKids」を読んでみた

350ページの長編ですが、数時間で一気に読み終えました。ページをめくる手が止まらない。まるで一本の映画を見終えたようなスピード感と臨場感でした。上原正三の名前がついているので、摩訶不思議のワクワク大冒険があるのかなと期待していました。が、思っていたのとは違う展開ながら、ラストには予想を上回るおもしろさと感動に包まれていました。
 登場人物の一人一人が丁寧にキャラ付けされていて、いきいきと躍動している。さすが稀代のストーリーテラーです。その上、キャラクターたちの一人一人が、戦争の癒やしようのない傷を抱えて生きています。
戦中、戦後に沖縄に起きた現実に目を背けず、まっすぐと向き合っていきます。
 様々な悲劇が、子供達に起きながらも、この物語に流れる明るさはなんだろう。けして予定調和にめでたしめでたしみたいに嘘っぽい結末ではないんです。むしろ、傷は残ったまま、失ったモノは取り返せないまま。でも生き残ったものは前に進んでいくんですね。
 少年たちがお笑い芸人センスルーにそそのかされて、結婚式に余興で踊りを見せるつもりが、逆に葬式の席に出てしまう「およびでない」場面があるのですが。
 そこで逆上した戦死した息子の親が殴りかかる寸前、センスルーがいったセリフ。
「こうして葬式ができるのも、生き残ったからでしょう。あの戦争で生き伸びたのは奇蹟みたいなもんです。戦没者も喜びますよ」というような意味のセリフを言い、参列者もみんな納得して、あとは三線を伴奏に唄い踊る。
 これがとても心に残りました。
 上原作品の全てに通底するものだと思うんです。
 生きている喜び。人間賛歌。
 どんな悲劇を描いていても、ラストは生きる希望を与えてくれたんです。
 それを改めて再確認しました。
 そして、「帰ってきたウルトラマン」の最終回に登場した。
 
ウルトラ5つの誓い
一・腹ぺこのまま学校に行かぬこと
一・天気のいい日に布団を干すこと
一・道を歩くときには車に気をつけること
一・他人の力を頼りにしないこと
一・土の上を裸で走り回って遊ぶこと
って余分なこと書いちゃいましたが、つまり何が言いたいかというと、
 
抽象論が全くないんですね。全て具体的なんです。
生きていくってことは常に具体的に行動があって、理想論や抽象論じゃないんだな。
今回の主人公達も本当に現実の中で、他人の力をあてにしないで、自らの力でなんとか生きていこうとしている。
 徹底的にリアリストなんだなあ。と感じました。
 リアリストであるからこそ、どんな逆境でも笑って生きていく。
 そんなメッセージを上原作品から受け取ったような気がします。
数々の作品をリアルタイムで見た者の感想は本当に訴えたかったのはこれだったんだ。テレビの制約のためにオブラートに包んで伝えるしかなかったんだと知りました。それでも当時子供だった私にも強烈な残るモノを与えてくれました。その残るモノの正体は当時はわからないままだったけど。 今回何十年もかかってやっとその正体を知った気がします。
 と同時に、昔見た作品も何か新たな角度から光を浴びてまた見返したくなっちゃいました。郷秀樹がウルトラマンジャックに新たな生命をもらって蘇るように。
 やっぱオタクですね。
 
うまく伝わったかどうだか分からないが、絶対おすすめの作品です。
是非!
 
 
 




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