里見弴「文章の話」

小津安二郎監督の「秋日和」「彼岸花」の原作者。有島武郎の実弟で志賀直哉の親友。
 関係者にそうそうたる名前。で文章と名がついたら、川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫の「文章読本」のような文章に対する定義が書かれているのでは? 難解? と読むのが躊躇われたが、戦前の昭和十年頃に少年向けに書かれた本なので、以外と読みやすかった。
 でもタイトルに文章がついているのに、文章については、全体の終わりの部分の一割くらい。その前は、著者独特の人間観・人生観が解かれている。
 文は人なり。まず人間を完成させないと。、いくらきれいな文章が書けても意味をなさない。
「文の前に、まず人間を磨け!」
 て、ところでしょうか。
 その人生観が独特すぎて実におもしろかった。作家なんだけど、ひょっとしたら心理学や行動経済学や脳科学などの学問に進んでいたら、独特の理論を生み出していたに違いない。
 著者独自に編み出した人生の概念が全部、数式・図解化されているんです。ここが他の文豪とちょっと違うところ。
 

誕生点

横軸は人間軸。端と端にA点とB点があります。AとBの間に全ての人類が入ります。縦軸は時間軸。Y点とZ点があります。Y点は古来人類が誕生した瞬間。Z点は未来の終着点。この線の中に全ての人類はいるということなんです。
 そして父と母の間に生まれた時間。e点こそが自分の誕生点。
「人間の生涯は、その誕生点によって、影響され、束縛され、支配されている」
 まことにその通り。タイムマシンやどこでもドアができないかぎり。自分もって生まれた環境からは抜け出ようがないです。
 またこの図式から人からの恩を読み解きます。
 AB軸から衆生恩
「どんな人間も一人では生きていけない。多くの名も知らない人から助けてもらっている」
YZ軸からは、
「父母、果ては先祖代々の恩があって今生かされている」
 そして、縦横の軸の中の1点、e点=誕生点こそ、世界の中のたった一つの点。
「私という存在は現在過去未来、全ての人類の中で、たったひとつの存在である」
 この図式だけで、自分自身の存在全てが規定できてしまうんだからすごいです。

喧嘩線

 さて、e点で誕生した私、生まれたときはまっさらなので、素質と魂しかありません。
それが、ドンドン自分以外の他との関わり愛で経験が積み重なります。だんだんと自我が目覚めていきます。自と他がぶつかり合うの線が喧嘩線で思春期でじょじょに高くなっていって、大人になると成熟してだんだん線が低くなります。
 なぜ喧嘩線が大事なのか。弴氏の主張は「たいものをたいせよ」
やりたいことをやりたいようにせよ。と言うことなんですが、これは自の確立です。自を
純粋な心、知恵、意思の力で確立して、喧嘩線を乗り越えよということです。
「嫌われる勇気」に通じるものがあります。
 いくら美辞麗句や肩書きで外を塗り重ねても、本心から書いた文章でなければ人の心をうたない。
 イケダハヤトさんの「武器としての書く技術」でも、同調圧力に屈せず、本音で文章を書くとありました。小手先よりも、まず自分の根っこを確立する方が大事だと思いました。




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