悪魔のようなあいつ

1975年三億円事件の時効に合わせて、作られた作品。放送されて以来、一度も再放送のないまま幻の作品となって何十年も見られなかったドラマが今では気軽にYouTubeなんかでも見えちゃいます。まことに不思議。
 当時、歌手として人気絶頂の沢田研二が連続ドラマ初主演。当時のジュリーは美しさの絶頂。としかたとえようのない妖艶さ。ジュリー扮する三億円の犯人可門良と隠し持った三億円を巡っての群像劇。美しい良に虜にされるのは、誰も女ばかりじゃないよ。藤竜也さんとの関係はあきらかに同性愛。当時女優さんがテレビドラマで脱ぐのはめずらしくなかったので、過激なベッドシーンが批判されたのではなくて、もしかしたらホモっぽい表現が嫌煙されたのかもしれない。
 演出・プロデュースは「寺内貫太郎一家」
「時間ですよ」の久世光彦だけあって、スタジオドラマ。セットがいつも同じ所ばかりで事件が発生する。女性との絡みもいつも同じベッド。看護師役の篠ひろ子はいつも白衣か裸!おのおの服装や髪型がほぼ固定されてしまって。記号化というかキャラ付けして、混乱させない配慮なのだろうか。
 「傷だらけの天使」みたいな映画監督で撮る(それこそ脚本の長谷川和彦監督が撮ってれば)アクティブなアクション映画になってたかも。
 のろのろとした展開の前半はそれゆえに女優さんとの絡みがいっぱいの退廃的ムードたっぷり。打ち切りが決まったのか後半は猛スピードで各々登場人物たちの破滅が描かれていく。
 ドラマは低視聴率のまま、時効成立前で打ち切り。でも挿入歌「時の過ぎゆくままに」
は大ヒット。得したのはジュリーと作詞した阿久悠・そして作曲の大野克夫か。その後、ヒット曲を連発。ジュリーは俳優として、反社会的かつ妖艶な役柄を次々に熱演。「太陽を盗んだ男」「魔界転生」など。その時には必ず対決する男くさい役者さんが出てくるのが特徴。「太陽―」では菅原文太。「魔界―」では千葉真一。両者の個性がより際立ちます。
 ちなみにずっとジュリーと同じタイガースに所属していた岸部修三こそ、現在の岸部一徳。井上堯之バンドのベース担当していた。
 だから「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「寺内貫太郎一家」の音楽を演奏していた。
 で、この「悪魔のようなあいつ」が俳優デビュー作。いつも白いスーツの現実離れした派手さのやくざ。
 最終回のラスト。まわりから愛されていた良がついに悪魔の本性をあらわす。次々と奪ったライフルで、仲間も撃ち殺す。警官達に囲まれて蜂の巣になって死す。
 うー。なんの救いもない。最終回、主人公が死ぬにしても、まわりに惜しまれて死ぬとかね。あればいいんでしょうが。反逆のドラマここに完結。
 盟友のショーケンはこのころ、「前略おふくろ様」で、反体制の役から大人の役者へと脱皮。ドラマは急激に反逆者よりも、体制側から描かれるようになる。
 反骨心は時代劇やアクションでオブラートに包んで隠し味になった。
 今も昔もテレビはお茶の間のものだから、危ない作品は受け付けない。だが、70年代の真中頃、一瞬の火花のように映画からやってきた反逆テイストのドラマが現れ、あっという間に消えていった。
 だが、見た人の心にいつまでも残り続ける。




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