私的寅さん論

 
当然ながら、寅さんは世代だ。もう、物心ついたら映画館では正月とお盆には寅さんが上映されていた。うちの町の映画館は東映だったのだが、なぜか邦画はごちゃまぜで、必ず寅さんだけは来ていた。
 うちの家業はほぼ年中無休で、初詣に行って正月映画を見に行ったぐらいしか、どこかに行ったという覚えがほとんどない。
 それほど正月=寅さんというのは日本人の中で定番化していて、もっと渥美さんが長生きしていたら、完全に日本の風習になっていたかもしれない。
とは言え、行っても子供の頃の「男はつらいよ」の印象は、
「いつも同じ事ばかり繰り返して何が楽しいのかわからん」
で、けしていつも楽しみにしていたワケではない。
 時代劇のチャンバラや、刑事ドラマの銃撃戦は喜んでみていたのだが、予定調和の喜劇は子供にしてみたら、テンポが遅く
「たるい」
気がした。
 それに、いつもヒロインとあと一歩のところで身を引いてしまう。シリーズ当初は寅さんの勘違い、他の男性と既に恋仲である。という玉砕パターンだったのが、後半になると、ヒロインの方が積極的なのに寅さんの方から逃げてしまう展開が多くなった。
「寅! ここでなぜいかない!」
 と、いつももどかしかったが、なぜ寅さんが逃げ腰なのかは観客は知っていた。
両思いになるとシリーズが成り立たなくなるのである。
だからいつも寅さんの方向転換は尻切れトンボになる運命だった。
 本当はシリーズも寅さんが結婚したり、職業替えする案も浮上したこともあったらしい……。だが、寅さんの設定を変更することは、もはや観客が許さなかった。だから、変えなかった。
 私も今では変えなかったことに感謝している。もし変わっていたら、これほど長く愛されるシリーズになっただろうか。
 なので、学生時代の私にとって寅さんは、いつまで古くさいことやってんだ、的な存在で、少し疎ましかった。
だが、そんな状況がじょじょに変わる。
寅さんが恋愛の土俵に上がるのを降りて、変わりに甥の満男が参戦。
勝手に僕は寅さんはモテない男の代表のように思い込んでいた。同年代の寅さんの血を引く男は、果たして恋愛成就できるのか。他人事ではなかった。また、満男の恋の顛末が気になって、通っていた。
 結局、渥美さんの死で、尻切れトンボになって。満男がその後、どうなったか分からずじまい。多分ヒロインに海外に行かれて振られただろう。
 その後、リアルモテない男の私の恋は次々と破れて――
思い出したくもないが、今は二児の父ですから、少々振られても大丈夫だよ。
 この時期、テレビはトレンディードラマが隆盛。いけてる男と女の話ばかり。女に振男の話なんて流行らなかった。それを逆手にとったのが「101回目のプロポーズ」だ。このドラマは一生懸命見たな。
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