白土三平おすすめ作品「嵐の忍者」

白土三平漫画研究家のま、いっかけんです。

今回は白土初期作品の中でも重要な位置を占める「嵐の忍者」全3巻を紹介します。

嵐の忍者とは?

「嵐の忍者」1958年から1959年にかけて貸本漫画として発表されました。

以前このブログでも紹介した「甲賀武芸帳」と「忍者武芸帳 影丸伝」のちょうどあいだに作られた作品です。

甲賀武芸帳の記事はこちらから

白土三平「甲賀武芸帳」の魅力

忍者武芸帳の記事はこちら

白土三平作忍者武芸帳の影一族に強みを学ぶ

「甲賀武芸帳」では、まだ宮本武蔵や柳生一族、またなぜか林不忘作の丹下左膳が登場したりなど、まだ「柳生武芸帳」の五味康祐作品や他の漫画の影響が色濃く残っています。

少年漫画っぽい絵柄とは、真逆な残酷描写。

忍者の超人的な技芸の漫画っぽい表現の中に、はっきりとした身分差別、飢餓、一揆の実態など、漫画っぽい中に厳しい現実をしっかり見つめる視点とが混在しています。

甘さの中に厳しさがあり、空想の中に現実があるというか。

たとえば絵柄、第3巻の表紙を見ると、分かる通り、主人公・土丸の指が4本しかありません。

これは当時の漫画、アニメーションは指の数の省略は暗黙のルールでした。


それが、敵対する剣士あばたの狂四郎を斬ると前腕が真っ二つに裂かれるなど、手塚漫画のタッチを色濃く残しながらも、次第に独自のリアルな表現が芽生えているのです。


後の白土漫画の萌芽がこの作品のここかしこに見られています。

例えれば、卵の殻を破った雛が成長して飛び立つ瞬間がこの作品の中に見られるのです。

前半を彩る男装の女剣士・三日月早苗

貧しい村に住む茂助は高い年貢にあえぐ村の実情を城主に自訴に向かいます。

自訴すればその時点で切腹は免れません。茂助は死を覚悟して訴え出たのです。

ところが、強欲な城主泥沼伊賀守は茂助を一刀の元に切り捨てます。

山育ちで運動神経抜群の茂助の息子・土丸は父の仇を討とう伊賀守を付け狙いますが、そこで藩の剣術指南役・女剣士の三日月早苗と出会います。

早苗は剣術指南の座を狙う穴山主膳に先代の指南役だった父を殺されていますが、自分の使命は多くの剣士を育てることと、仇討ちを否定しています。

早苗は不治の病を抱えていて、剣技の全てを土丸に授けます。

早苗は男装はしていますが、絶世の美女、酒色に目がない伊賀守がほっておくはずもなく、早苗を愛人にしようとしますが、断固早苗は拒否。

怒った伊賀守は早苗の抹殺を命令します。怪剣士あばたの狂四郎と穴山主膳の罠にはまり、早苗は若い命を奪われます。

父を殺され、師を奪われた土丸は復讐の鬼となります。

かつて命を救った甲賀忍者望月佐助から忍術を教えてもらい、忍術剣術をおさめた最強の男になった土丸は百姓一揆の首謀者として大暴れします。

そして、自分と同レベルの剣の腕を持つ武士・左近と友情を深めますが、左近はなんとにくき伊賀守の息子でした。

そして、幼馴染の少女も加代も否応なしに一揆の闘争の中に巻き込まれていきます。

ドラマの展開も主要なキャラクターの行動とぶつかりあいの中から生まれていきます。

闇一族登場

忍者武芸帳では影丸の部下に、それぞれ自然の能力を活かした忍者軍団影一族が登場します。

「嵐の忍者」では、その原型とも言える闇一族が登場します。

しかし、ヒゲは怪力、亀はすっぽんのように喰らいついた離れない強い歯、ハゲは頭をピカピカに磨いてその眩しさで人を幻惑するなど……

自然の力を使って、忍術をするという白土忍術になるまでもうちょっと突き抜けきれてない感じです。

「嵐の忍者」が終了してその年の暮れには、「忍者武芸帳 影丸伝」がスタートします。

1年もしないうちに急激に、絵も表現もストーリーテーリングも本当に雛が成長して、翼を広げ空を羽ばたくように、作家白土三平も短い期間で急激に完成したようです。

1人に人間にもそういった急激な成長を遂げる期間があるのでしょうか?

このように白土三平は何度も何度も同じアイデアやモチーフを練り直して、磨いていくタイプの作家のようです。

これからまた「カムイ伝」「カムイ外伝」とどんどんリアルで緻密な表現が広がっていきます。

 

まとめ

「嵐の忍者」で少年娯楽漫画の基礎はだいたい固まっているような気がします。

今の週刊少年ジャンプの漫画「僕のヒーローアカデミア」「ブラッククローバー」「鬼滅の刃」とか全部・白土忍者漫画をベースにしていると断言できますよ。







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