山田洋次&ハナ肇コンビ「馬鹿シリーズ」はただのバカじゃなかったよ

山田洋次監督ハナ肇主演コンビ「馬鹿シリーズ」とは?

植木等さんも出てる。今で言うカメオ出演

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クレイジー第2の男・ハナ肇主演作1964年当時、クレイジーキャッツはテレビで大人気でした。1962年の東宝製作「日本無責任時代」でボーカルの植木等さんが無責任男で一躍映画でも大看板に、しばらく東宝映画にクレイジーキャッツメンバーが共演していましたが、次第に個々に映画会社に引っ張られてバラ売り出演するようになります。そこで、ハナ肇さん主演で作られた喜劇映画が「馬鹿丸出し」です。この作品はクレイジーキャッツメンバーが総出演でリーダーをバックアップ。植木等さんもノンクレジットでナレーションと最後の重要な役を演じています。

「馬鹿」の意味ですが……

馬鹿3部作だけに今では非常に読みにくい馬鹿と言う字が全てついているのですが、単なる頭が悪いというより、「アウトサイダー」的な意味で馬鹿という言葉が使われているような気がします。

物語の舞台は村だったり島だったり、閉鎖的な保守的な集落の中で一人はみ出すしたり、目新しいことや外から違う仕事を持ち込んでくる男。

第1作「馬鹿まるだし」では侠客めいた、村で起こるもめ事を処理する男。

第2作「いいかげん馬鹿」では漁しか産業がないジリ貧島に観光を持ち込んでくる商人気質の男。

2作目までは、地域の平和を乱すような事件を巻き起こすのだけど、結果的には住民たちも「馬鹿」のとった行動の恩恵を受けて、損は馬鹿が受け持つという図式。

ところが第3作「馬鹿が戦車でやってくる」の住民と馬鹿の図式は完全に村八分の感じ。完全にお人好しの馬鹿の行動を住民全員で笑いものにしている。
そこで怒った馬鹿は住民相手に大暴れしてしまう。その罪をつぐなうように言われ馬鹿の母は自分の土地の権利を手放す書類に騙されてサインをしてしまう。
それを知った馬鹿はついに怒り爆発!終戦に軍から持ち帰った戦車にのって島民を攻撃するという展開。

これなんかお笑いモードでやるからギャグですむかもしれないけど、リアルにやったら八墓村のモデルになった新見事件さながら村八分になった人間が村民に逆襲するというお話そのものです。スカッとするよりも、ちょっと怖くなってしまいました。

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「馬鹿が戦車でやってくる」はジョニー・デップ主演「ギルバート・グレイプ」に設定がそっくり

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製作されたのが馬鹿シリーズの方がぐっと昔ですが、1993年のジョニー・デップ主演の「ギルバート・グレイプ」の主人公に設定がそっくりです。父のいない家庭で、障害を持つ母・弟の世話のために生まれ育った土地から離れられないという境遇。

障害を持った弟がやたらと高い所へ登って困らせるという設定も偶然同じ。

ちなみに弟役は「馬鹿戦車」では、クレイジーのメンバー犬塚弘さん。難役を見事こなし、以降山田洋次監督作品では重要な役を演じています。「ギルバート」では若きレオナルド・ディカプリオが演じています。ディカプリオはこの作品から頭角を現し、またたく間にスターになっていきました。これはまた別の話。

その後のドラマの展開は全く違うものですけどね。

寅さんシリーズと馬鹿シリーズの決定的な違い

馬鹿シリーズ始め、山田洋次監督とハナ肇コンビの映画はキャラクターは同じでも、毎回毎回違う設定の別の物語でした。主人公の行動は最終的には自分と周囲とに後戻りできない人生の一大決定的変化を引き起こします。それに引き換え寅さんは何作たっても何も結局変わらないままです。変わってしまう変えてしまうとドラマが終わってしまうからです。

これは別にこのシリーズだけの特徴ではなくて、当時の映画のシリーズのほとんどは同一キャラクターだけど、舞台・物語は別というものでした。
植木等主演の「無責任」「日本一」シリーズしかり「社長」「駅前旅館」「若大将」シリーズ(若大将シリーズはメンバーの名前も舞台も同じなのに、毎回違う部活のエースで何年経っても永遠の大学4年生でした。同一設定のパラレルワールドです)小林旭さんの渡り鳥シリーズ・鳥高倉健さんや鶴田浩二さんの任侠映画もそうでした。

どの作品から見ても違う設定なので1作目を知らなくても大丈夫なように作られていました。

「眠狂四郎」「座頭市」などの時代劇はキャラクター自体がおなじみで浸透していて、毎回違う場所で違う敵を相手にするので続いていても大丈夫です。

「男はつらいよ」はもともとテレビドラマになりました。テレビドラマだとシリーズ化されると人物・設定はそのまま歴史を重ねていきます。その影響があると思います。

ドラマの最終回では寅さんはハブ噛まれて死に、とらやは土地を買収されてマンションになり、さくらとおばさんはそこに住むようになります。

つまり、ドラマの中で一応決定的な変化が起きて、決着がついているんです。

ところが、寅さん映画がシリーズになり、柴又は観光名所になって、現在に続いています。

寅さんシリーズの場合、変化しないのは寅さんだけ。妹の桜は結婚、出産、息子の満夫はどんどん年とともに成長。まことに唯一無二の映画キャラクターでした。

主演がハナ肇さんから渥美清さんへバトンタッチしたころ、ちょうどクレイジー・キャッツも全盛期を終えて軒並み映画のシリーズも終了します。

クレイジーのメンバーは各々コメディアンから脱皮し、本格的な俳優の道を進むのでした。様々な役柄に挑戦しました。
ところが、逆に渥美清さんは寅さんのイメージに縛られて他の役に挑戦できませんでした。

渥美清さんは森繁久彌さんに憧れて喜劇役者から本格俳優をめざしていたようです。

ところが、皮肉なことに本格俳優になったのは、ポジションが交替したような形になったクレイジーキャッツのメンバーなのでした。なんという運命のイタズラ。

まとめ

植木等さん、ハナ肇さん、谷啓さんらクレイジーキャッツの面々がテレビで映画で大暴れしたのは1960年台から1970年初頭頃までのまだ日本中が上り調子で「一発あててやる!」という気概がまだ残っていた本の数年のことでした。




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