「ゲド戦記Ⅰ」の影との戦いの影はうつ病と似ていた。

ま、いっかけん
近所の古本屋さんが閉店セールで半額でゲド戦記全巻をゲット!大人買い?なんとセコい大人だ。

ゲド戦記Ⅰ影との戦いとは

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)posted with ヨメレバアーシュラ・K. ル・グウィン,Ursula K. Le Guin 岩波書店 2006-04-07 AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo

「ゲド戦記」は ル・グウィンは惜しくも2018年に88歳で亡くなったアーシュラ・K・ル・グウィンによって書かれたファンタジー小説です。

ル・グインの小説は人間の内面の投影していて、はっきり言って印象は暗い。ジブリでアニメ化(第3部のお話です)された時もジブリアニメらしからぬ暗さでした。

でも、そこがル・グインの真骨頂なんですよね。とかくラノベだと異世界が現実逃避できる遊園地みたいな場所になんですが、世界をより色濃く象徴しているのです。

ゲドは小さな島の鍛冶屋の息子。ある日、大国の軍隊が島を襲撃、伯母から教わったにわか仕込みの魔法で軍を追い払います。

伝説の魔法使いオジオンに見込まれ魔法の修行へ。
でも修行は単調で若きゲドにはつまらないものでした。魔法はその威力が大きくなればなるほど世界のバランスを崩してしまうので、魔法の威力を付ける前に人格を磨かないといけなかったのです。

もっと早く大きな魔法を身に着けたいゲドはオジオンの紹介でローク島の魔法学院(ハリポタのボグワーツみたいなのです)へ行きます。

そこでは修行する若者どうしで魔法の腕を張り合います。競争に負けているコンプレックス、裏腹にプライドだけは高まる。自分より成績のいい奴にからかわれて霊を呼び出してしまいます。

能力以上の魔法を使ったために、死の世界が現世に流れ込み、ゲドは自らの影に襲われて瀕死の重傷を負います。大賢人の命とひきかえに一命をとりとめたものの、影はゲドの近くにまとわりついて狙っています。

生々しい影の描写

ローク島を出たゲドは竜退治をしたり、華々しい活躍もするのですが、心は晴れません。影からの攻撃は為す術なくやられる一方。影から逃げるために世界をさまよいますが、時折、旅で知り合った人の魂を喰らい身体を乗っ取ります。

実体がないながらもゲドにつきまとい時に襲いかかる影の描写は生々しく、「うつ病」や「不安障害」になった人だと、納得するでしょうがまさしく実体もなくのしかかってくる「アレ」がリアルに表現されているのです。漫画「うつヌケ」で登場したモヤモヤした「アレ」です。

20年前に「影とのたたかい」を読んだときには、「内面の不安を影にたとえてうまいな」とその趣向の見事さに驚きました。小説としての技巧の素晴らしさに感動したんですね。

うつ病の治療中の今、改めて読み返すと、ル・グイン先生も「うつ」か「不安」を身を持って体験したのでは? と感じる位、影の描写が自分の中でリアルなものに感じられたのです。

影とむきなおる(ちょっとネタばれ注意)

影から逃げるばかりだったゲドに転機が訪れます。追い詰められてハヤブサに変身したまま戻れなくなったゲドを師匠オジオンが元に戻してくれました。オジオンはゲドを諭します。
「影とむきなおるじゃ」
ゲドは今度は影を追いかけるようになります。ところがいざ影と対決しても、もともと実体がないので、するりと逃げられて消えてしまいます。

それどころか、だんだんと影がゲド自身に似てきて、人々に煙たがれます。

いよいよ影との最後の対決。影の正体を突き止めました。影は……ゲド自身だったのです。

逃げるのでもなく、戦うのでもなく、むきなおる。自分の影の部分を認め、受け入れることで2つに引き裂かれたゲドは1つに統一されたのでした。実に深い!

逃げるのでもなく、立ち向かうのでもないうつへのアプローチ

うつ病と最初に診断された時は、完全に動けなくなっていました。身体だけじゃなく、心も停止状態で、いつもは楽しめるエンタメや本も全然頭や心の中に入ってこないんですね。ゲド戦記で言えば、影に一方的にやられ放題の状態です。

ちょっと、回復期になると「くそ! ウツの奴ぶっ飛ばしてやる」早く回復しようと、焦っています。やたらポジティブシンキングで自分を鼓舞したり、ウォーキング・筋トレに励んだり。体力はアップするかも知れないけど、影もウツもとらえどころがないので、気合い入れて立ち向かってもスルスルと逃げられちゃいます。

そして、隙を狙って、弱っているところを襲ってきます。簡単にはうつは治せにないことに気がついて、余計意気消沈するんですね。ゲドも影にむきなおるを最初は立ち向かうことと履き違えて、さらに窮地に陥りました。

長嶋一茂さんの著書「」にも、ありましたが、過度のポジティブシンキング。過度の筋トレ、ランニングはうつやパニック障害には有害だったりして、注意が必要です。

ゲドは最終的に影を認める、受け入れることによって、再び影を自分の体にひき戻し、一体化します。うつ病も認める受け入れることで、解消できるのでしょうか? 治療中の自分には未知の境地ですね。

いつか解放されるの日が来るのか。それとも長い長いトンネルの入口なのか、今はまだ分かりません。




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