ハナ&山田コンビ最高傑作「なつかしい風来坊」

ま、いっかけん
山田洋次監督が寅さんシリーズより前に取り組んでいたハナ肇主演シリーズを遡って見てきました。今まで馬鹿シリーズはじめ後の寅さんシリーズでもない決定的な違いがこの作品にはあります。

身分は違えど通じ合う男の友情

それは有島一郎演じる小役人良吉と土木作業員と源五郎との固い友情で結ばれていることです。ひょんなことで知り合った立場の180度違う二人は、やがて意気投合します。

源五郎は良吉を「先生」と呼びますが、その関係は寅さんの初期の東野英治郎が演じた先生とも笠置衆の御前様の上からの目線とも弟分の登や甥の満男の下からの目線とも違う。

身分は違っても同じ男・人間として同じ目の高さで見た友情でした。源五郎が不測の事態で犯罪を疑われても、どんな時でも良吉は源五郎を信じます。

馬鹿シリーズでも寅さんシリーズでも、寅さんや源五郎は非日常の人間、対する桜はじめ葛飾の住人は日常の人。
盆と正月だけに、非日常の寅さんが帰ってくるのです。
日常の人たちにとって非日常の人の言動は異質なもので、結局、最後には決裂して、旅だって行きます。

しかし、この作品だけは違います。
そこには非日常と日常を仲介する良吉の存在があります。「どんなことがあっても絶対に信じ合う」そんな人がたった一人でもこの世にいたら、その人はどうなるかと言うと……幸せになります。

現に、ほとんどが別れてしまって終わりの山田喜劇の中で例外的にこの作品の源五郎は幸せになってしまうのです。

悲劇? 寅さんには友人がいなかった?

もし葛飾に、寅さんにこんな理解者がいたら、寅さんはひょっとしてあんなに旅から旅の人生を送らずに、かわいい嫁さんと子供ができて幸せに暮らしたかも……。

それは困る。

寅さんが幸せに落ち着いてしまったら、シリーズが終わってしまう。

だから、あえて寅さんシリーズには寅さんを完全に理解する存在を置かなかったのかなと思いました。

この「なつかしい風来坊」に限っては、どんでん返しの幸せが待っているので、なんとも知れない幸福感でいっぱいになります。

ま、いっかけん
この上ない幸福感につつまれるラストは後の名作「幸福の黄色いハンカチ」を彷彿とさせます




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