正視できないぐらい痛ましい人生 こんな人生よしにしましょうよ。

前回の「舞踏会の手帖」に続いて、映画史に残る名作なのに、
ずっと見逃していた作品を見る第2弾です。
なぜこんな超・超名作なのに見逃していたのか――
ひとえに「道」やるせないわびしい感じが、つらかったのです。
見た後、つらくてしばらく席を立てない位の衝撃。
ずーっと後を引いてしまう。
一生忘れられない。
かっての映画にはそんな作品がたくさんありました。
今はどんなジャンルだろうと、鑑賞後があんまり後をひかない作品が多いような気がします。
観客動員が多い作品を平均したら、こんな形になったのでしょうか?
ちょっと味が均等すぎて寂しい……
と、いいながらそんな映画を敬遠するんだから人のこと言えませんね。
淀川先生のベストワン・絶対不変の歴史的名作
監督は名匠フェデリコ・フェリーニ。「甘い生活」「82/1」など数々の名作を残しました。
幻想的で象徴的な映像表現が特徴的ですが、
「道」は初期の作品で現実そのものを描くイタリアン・リアリズムの影響があったんですね。
主演はジュリエッタ・マシーナ。フェリーニ監督の妻で生涯を共にしました。
何度も監督の作品に出ています。
共演はアンソニー・クイン。
世界をまたにかけて娯楽作や名作と幅広い活躍をしました。
面長な顔立ち。
日本語版「その男ゾルバ」も演じた藤田まことさんに風貌が似ている気がします。
失った後に気がつく本当に大切な人
クイン演ずるザンパノは怪力が売り物の大道芸人。
オートバイの後に幌をつけて渡り歩く旅暮らしの男。
ジェルミソーナは死んだ姉の代わりにザンパノから買われた女。
ザンパノは粗暴でジェルミソーナを奴隷のように扱います。
女を口説くとジェルミソーナを放って女と共にどこかへ行ってしまう。
ある時、病気になったジェルミソーナを見捨ててザンパノはよそへ逃げてしまう。
数年後、ジェルミソーナが死んだことを知り、海岸で彼女の名前を泣き叫ぶザンパノ。
本当は愛していたのに不器用な接し方しかできなかった己を責めるザンパノ――
という表現になっていますが、
これってDVやモラハラを繰りかえす伴侶にありがちな行動じゃないの?
って気がつきました。
作品を見ている間、
私は亡き母のことを思い出して、泣けてしかたがなかった。
別に、大道芸人じゃなかったけど、病気をほっとかれたわけじゃないけど。
昔の夫婦関係の奥さんって、
ジャルミソーナと似たような立場の人が多かったように思います。
ザンパノの所業は今だと完全にNGどころか、100%犯罪です。
だから、わからずにわがまま通したけど、
失ってみたら本当はお前が一番大事だって気がついたんだって――言う展開は今では通りませんよ。
ジェルミソーナになりがちな人もちゃんとザンパノ=ジャイアン系からはさっさと逃げましょう。
私自身も母を偲びながらも、
自分の中にある母の部分を憐れんでいる。
つまりモラハラに合っている自分の心を慰めている。
つまり自分が可愛いんですな。
「道」を見て、
「何が言いたいの? この映画?」
っていう感想を持つ人が増えたら、
世の中もっと住みやすくなっているかもしれません。
結論
もしも身近な人から支配的な扱いを受けているとしたら、
受けているのに長年の愛情というものに目が霞んでいるとしたら、
さっさと逃げた方がいい。
あんたもジェルミソーナみたいになっちゃうよ!
この映画は、ヒューマニズムの映画じゃありません。
ホラー映画です。
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