摩訶不思議の先駆け名匠ルネ・クレールの処女作「眠るパリ」

なかなか鑑賞できることの少ない名匠ルネ・クレールの初期作品がDVDで発売されており、DMMでレンタルできました。

 

ルネ・クレールとは?

 

ルネ・クレール監督と言えば、「巴里祭」「巴里の屋根の下」「自由を我等に」一番にこれらの作品が取り上げられますが、サイレント時代から戦後1960年に渡って映画を作ってきたフランス映画の巨匠ですね。

楽曲を活かした下町の叙情あふれる映画で有名ですが、摩訶不思議な味の映画もたくさん撮っています。

「奥様は魔女」で魔女ものの先駆け、「幽霊西へ行く」ではゴーストものの先駆け、「夜ごとの美女」はタイムトラベルものの先駆け、「明日を知った男」はタイムパラドックスものの先駆けと藤子・F・不二雄先生が唱えたようなSF=すこしふしぎなテイストの映画の原点と言う映画をいっぱい残しているのです。

当時のクリエイターとしては、相当先に行っていた人でした。
そのルネ・クレール監督の処女作が「眠るパリ」です。

実に1924年の作品ですよ! 約100年前で、この新しさみずみずしさ。
全く古さを感じさせないセンス・オブ・ワンダーです。

ある日、突然、パリの時間が止まった!

ある朝のパリ。

なぜかエッフェル塔に一人住む若い男は、夜の時間で時計が止まったまま動かないことに気が付きます。

塔の下を見下ろすと、人の姿はまばらで自動車や自転車も動いていません。

エッフェル塔から下の街は全く時間が止まっていたのです。

ほとんどの人は自宅で眠ったままになっており、夜に街に出たわずかな人は止まった姿勢のまま動きません。

男はパリ中を彷徨いますが、誰一人動いているものはいないのです。

ストップモーションから思いついた? 斬新な発想

「時間よ止まれ!」

手塚治虫先生の「ふしぎな少年」など時間が止まってしまう物語の先駆けです。

ルネ・クレール監督はカメラで影像を撮っているうちに動画にストップモーションを挿入すると時間が止まったように感じる効果があるのを発見して、この物語を発想したのでしょうか?

「ふしぎな少年」では時間を止められるのではなくて、時間が既に止まっている世界です。

週刊少年ジャンプに連載中の「Dr.ストーン」では石化によって人類が固まっているんですが、この映画では時間が止まった世界を描いているのです。

時間が止まった世界ではお金は無意味

男はある時、自動車とすれ違います。

自分以外で動いている人々とはじめて出会いました。

自動車には紅一点の女性と複数の男性。

みんな飛行機に乗っていたのでした。

時間が止まらなかったのはエッフェル塔にいた男と飛行機に乗っていた連中だけ。

つまり、時間が止まっているのは地上だけでした。

この設定よくできていて、これで時間が止まっても太陽が動いている理由ができます。

この映画の時代ではちょうど日本では大正デモクラシーの年代で、登場するのはみんなモボとモガ。
都会的なセンスを持った若者です。
下町人情の後年のルネ・クレール監督のイメージとはちょっと違います。

自分たち以外は止まっているので、酒は飲み放題、カフェの食べ物も食べ放題。
はじめのうちは享楽的な生活を楽しんでいます。

そして、銀行に行ってお金を撮っても、警察につかまらないことに気が付きます。

お札を奪って、あっという間に億万長者に!

ところが、お金があっても時間が止まっているから、物やサービスとも交換しようがないし、お金があっても何の価値もないことに気が付きます。

バカバカしくなってみんなエッフェル塔の上からお札をばらまいてしまいます。

ここらあたり後年の「自由を我らに」だったり「最後の億万長者」だったり、お金って本当にそんなに大事? というメッセージが処女作から込められているんですね。

女一人、後は全員男。

時間が止まってしまった世界で楽しめるのは男の女でできることだけ。

たちまち、一人の女性を巡っての男たちのバトルロワイヤルが開始! 

と思いきや、エッフェル塔の下を覗くととある民家の窓から見える布切れは風にそよいでいるではありませんか!

つまり……そこだけは時間が動いている。
みんなそこへかけつけて、時間を元通り動かす糸口をみつけます。

賑わうパリと時間が止まったパリのギャップ

それから、いろいろあって結局、時間は動き出します。

動き出してからのパリは人人人。車車車。やはり大都会ですね。
冒頭の時間が止まったパリと、喧騒としているパリとのギャップがすごいです。
監督はここを描きたかったのかなと思います。
そして、意味がなくなってエッフェル塔から投げ捨てた札束が街のあちこちに転がっています。

発見した人たちは、なぜお札が転がってるのか、分からないまま競って拾います。

映画=ドラマを発見した驚きとよろこび

「眠るパリ」には第2作の短編「幕間」も収録されています。バレエのバックステージを特殊撮影を駆使して撮られています。
今では当たり前になった、重ね取りやスローモーションやストップモーションなど考えつく限りの特殊撮影が駆使されています。

1980年代、ビデオカメラが家庭に普及して、安価でビデオ撮影ができるようになった時のアマチュアビデオ作品に雰囲気が似ています。

さらに言えば、今年亡くなった大林宣彦監督が脚光を浴びるようになったのも8ミリ映画からでした。

今では誰もが持っているスマホで手軽に撮影することができるようになりました。その原点の原点の一人がルネ・クレール監督だったんですね。

「眠るパリ」をはじめルネ・クレール監督作品はDMMの無料お試し期間中に視聴できます。




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