
今まではDVDレンタルにはラインナップがなく、DVDセット上下2巻を購入しないと1話も見ることができなかったのです。
一部の映像も観たことがなかったので、さすがに全巻購入は躊躇していました。
その全貌を知ると、東映特撮ドラマの中でも最高峰のクォリティーであり、
、脚本家伊上勝さんの最高傑作と断言できます。。
◎目次
河童の三平妖怪大作戦とは

「河童の三平妖怪大作戦」1968年に水木しげる先生の「河童の三平」を原作にし、東映テレビで製作された特撮ドラマです。
時代的には「仮面の忍者赤影」の後で、「仮面ライダー」の前になります。
先の「仮面の忍者赤影」で青影を演じた金子吉延さんが三平を、白影の牧冬吉 さんが河童の六兵衛を演じました。
水木しげる先生の原作では、人間の三平が自分とそっくりの河童の三平と入れ替わるというお話でしたが、このドラマはキャラクターと設定だけを活かして、大幅に変更がされています。
水木先生は著作のアレンジに関しては寛容だったようで、 鬼太郎然り、悪魔くんしかり、貸本版、少年漫画誌版、テレビ版と自らも状況に応じて作品のテイストを変更しています。
現代の海外ドラマに通じる伊上勝の脚本術

自宅の地下にある禁断の扉を開けてしまい。河童の国へ迷い込んだ三平は人間にも関わらず妖術を身につけてしまいます。
三平が妖怪の掟を破ったせいで、母に呪いがかけられ、記憶喪失を無くした上、行方不明になります。
三平は母を探して旅をします。
これは水木原作には全くない要素です。
メインライターの伊上勝さんが設定したのでしょう。
母を探すうちに毎回、地上で悪さをする妖怪と出くわし対決します。
母探しがドラマに連続性を与えて縦糸をなし、毎回現れる個性的な妖怪とのバトルが横糸になります。
連続ドラマとしても、一話完結としても面白い作りなっています。
これは、「スーパーナチュラル」や「グリム」など、今、人気の海外ドラマの構成に似ています。
ドラマの構成の点でも伊上勝さんは、時代を先取りしています。
面白い連続ドラマの作り方を本能的に体得していたのかもしれません。
母または親族を探しながら悪を退治するという図式は、その後の東映特撮ドラマのパターンとして定着します。
後に日本アニメーションで「母をたずねて三千里」が放送されますが、既視感があったのは、散々、伊上脚本で観てきたからでしょう。
伊上勝さんの脚本デビュー作「遊星王子」の記事こちらから
天才子役金子吉延のいぶし銀の芸

青影役の時は主役の赤影に遠慮していたのでしょうか?
三平役の金子吉延さんは、青影の時よりリラックスしてのびのびと演技しているように見えます。
まるで水を得た魚、いや、河童のように……
アドリブとしか思えないセリフがポンポン飛び出して、まるで、脂が乗り切った落語家のような軽妙な演技。
それは、全盛期の植木等、フランキー堺、渥美清にまさらぬとも劣らない喜劇役者ぶり。
この子役、ただものではない……
第1話の演技を見るだけで唸らされてしまいます。
牧冬吉さんのご子息の談では、牧さんは金子吉延さんの演技に嫉妬していたそうです。
同じ金子姓の「悪魔くん」「ジャイアントロボ」に出演した金子光伸さんがやや舌足らずで棒読みなので、余計うまさが際立ちます。
金子吉延さんは学生時代にほぼ学校に通えなかった反動か、成人後に芸能界を引退。
うーん、そのまま行ったら、スゴイ俳優になってたかも……
残念です。
前半を彩るヒロイン河童王国の姫カンコちゃん

三平の母探しに随行するのは河童王国のお姫様のカンコちゃん。
どうやら三平に好意を持っているようで、三平が心配で河童王国からわざわざ地上に出てきました。
そのお供が六兵衛です。
ボーイッシュなベリーショートヘアに、クリクリした目が印象的。
キビキビした動きでミニ・スカートから伸びるすらっとした脚が魅力的です。
そのスカートの丈が際どくて、見えそうで見えない感じ。
途中で、お母様の待ったが入り、スカートの下にスパッツを履くようになりました。残念。
ドラマの展開に欠かせないヒロインのカンコちゃんでしたが、演ずる松井八知栄さんが映画「蛇娘と白髪魔」の主役に抜擢され14話で降板となりました。
wikiでは、本人が嫌がって降板していることになっていますが、後に金子さんや平山プロデューサーと対談しているので、こちらの方が正しい情報でしょう。
名バイプレイヤーの面目躍如枚冬吉が画面を閉める

カンコが河童王国へ帰って、後半は三平とカンコに三平のことを託された六兵衛とのふたり旅です。
物語、中盤で母の記憶は戻ったものの、今度は三平の方に呪いがかかって、日本の最端に飛ばされてしまします。
当初、自分ひとりだけでも大丈夫と慢心する三平と、カンコに頼まれたからイヤイヤ三平といる六兵衛は対立します。
2人で手強い妖怪と戦っていくうちに、苦労を共にして、真の絆が芽生えていきます。
カンコちゃんがいないのは寂しいですが、ドラマに新たな側面が生まれました。
後半のドラマを引っ掻き回すいたち男の暗躍

前半の母探しは都会で行われるので、妖怪たちは人間社会に溶け込み悪さもビルや自動車だ、美容など、現代風俗にマッチした妖怪が登場します。
後半はうってかわって、田舎の山村が舞台になりました。
妖怪たちも昔ながらの古風なイメージのものが多くなってきます。
前半にも登場していましたが、カンコちゃんに替わってイタチ男が暗躍します。
鬼太郎の名脇役・ねずみ男とほぼイコールのキャラクター。
金にや権力に弱くて、最初はいつも悪い妖怪の手下に使われ、結局悪になりきれず、三平に協力するというパターンです。
逃げ出す時は、強烈に臭いおならが必殺武器というのもねずみ男と同じ。
しかし、いたちだけに威力はこっちの方が上かな?
悪魔くんで二代目メフィストを演じた潮健児さんが演じました。
地獄大使のような強面の役もいいけど、やはりユーモアのあるメフィストやいたち男のような役がはまるようです。
怖いけど、色っぽい女性の妖怪たち

「河童の三平 妖怪大作戦」の時代はまだ、人間の時に役をやった人が、メイクをして妖怪まで演じていまいた。
役者さんとコスチュームアクターが別れてしまうのは仮面ライダー以降のようです。
妖怪たちの悪さが、人間の心の隙間を狙うようなことをするので、妖怪になった時も仮面じゃない方がしっくりくるのです。
特に女性の妖怪だと、色っぽさが一点、怖さに変わるので、恐怖倍増。
こんな妖怪なら襲われたいと思うのは私だけ?。
伊上勝の才能光る神キャラクター盲魔

妖怪の中でも抜群に印象に残ったのは盲魔でした。
盲魔は死人の目玉を取るという妖怪ですが。
この作品に限っては、なぜか座頭市のような風貌です。武器は仕込み杖ではなくて、鎖鎌になっています。
そして、幼い娘・鬼美を連れています。武芸は最強の盲魔の唯一の弱点が鬼美です。
まるで「座頭市」と「子連れ狼」が一緒になったようなキャラなんですが、実はこの年はまだ「子連れ狼」は始まっていません。
この作品の方が先なのです。
ひょっとしたら、原作者・小池一夫先生はこの盲魔をヒントにして「子連れ狼」を作った? と勘ぐるのは妄想しすぎですかね。
「遊星王子」にもあるのですが、脚本家の伊上勝さんは1本のシリーズになるほどのアイデアを惜しげもなく出していきます。
盲魔は悪い妖怪に鬼美を人質にとられて、やむえず三平と対決することになります。
うらやましすぎる子役の役得! ずるいぞ三平

東映特撮ドラマ「河童の三平 妖怪大作戦」と「悪魔くん」の情報と裏話が満載の本「『悪魔くん』『河童の三平妖怪大作戦』完全ファイル―水木しげる原作テレビドラマ」では、金子吉延さんの撮影秘話にぶっ飛びました。
なんと金子さん、カンコちゃんと撮影のある時は、いつもカンコちゃんの膝枕でお昼寝していたんだとか!
これが、現代の大人だったら完全にセクハラでme too運動の対象になってますね。
カンコちゃんが降板すると、ゲストの女優さんにかわるがわる膝枕してたんですと!
なんともうらやましい話です。
あえて言う「河童の三平・妖怪大作戦」にないもの
私の中ではすっかり東映特撮No.1の位置を不動のものにしている「三平」ですが、最後にこの作品に足りない物を挙げましょう。
ズバリ言います。それは格好良さです。
赤影や仮面ライダーのようにかっこいいヒーローがいないのです。
それが水木漫画の特徴とも言えそうです。
水木漫画の主人公は武器を持たず、便利な道具でもちゃんちゃんこだったり下駄だったり、全部身近にある日常品です。
そこが、武器を持って実際に戦場を駆け巡った経験のある人とない人の作品を大きく分けるポイントです。
水木作品を見ていると本当にかっこいいい奴なんてこの世にはいない。
そんなのはまやかしだと言っているような気がします。
三平も悪魔くんも半ズボンの当時の小学生の服装そのまま。
赤影や仮面ライダーのようなはっきりしたビジュアルや柔道一直線のような派手な必殺技がないことが、子供達の記憶から消えていったのような気もします。
まとめ
まだ仮面のヒーローというヒーロー特撮のフォーマットが固まっていなかった頃の作品はどれもそれぞれ個性的です。
ひとつひとつ試行錯誤されて作られているので、心に残ります。
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