白土三平「甲賀武芸帳」の魅力

ま、いっかけん
好きすぎてついつい語り過ぎてネタバレだだもれです。ご注意を!!
タイトル巻物主人公敵キャラ
サブキャラサブキャラ
甲賀忍法帖甲賀武芸帳石丸柳生十兵衛・宗矩2年ねたろう疾風小僧
風の石丸龍煙の書石丸柳生十兵衛・宗矩2年ねたろう疾風小僧
忍者旋風・風魔忍風伝竜煙の書風魔小太郎服部半蔵死神小僧美女丸

「風の石丸」は甲賀武芸帳のセルフリメイクだった!

ちょっと値段の高い甲賀武芸帳を思い切って購入!
ワクワクしてページをめくってみると、
「うん、これは……どこかで見たような……」
以前読んだ「風の石丸」と登場人物、設定、ストーリー、セリフほぼ同じだったのです。
それもそのはず、貸本漫画として出版されたデビュー2作目の「甲賀忍法帖」こそがオリジナルで、「風の石丸」は当時創刊したばかりの少年マガジンに連載されたセルフリメイクものだったのです。

ですが、風の石丸の方は諸事情あって(有名な作品の乗っ取り事件。主人公の名前をフジ丸に変更されて、おまけに著作権まで剥奪されるというひどい事件が……でも、これはまた別の話……)

また当然ながら物語は甲賀武芸帳をめぐる3つ巴の奪い合いになるのですが,甲賀武芸帳は元ネタの五味康祐著「柳生武芸帳」と同じく徳川幕府に反旗を翻そうとしている外様大名のリストが書かれてあります。
ここに名前があると、家名断絶は間違えないので、諸大名は是が非でも奪って処分したい。
また徳川方の柳生宗矩・十兵衛は絶対に自分のものにして手柄にしたいものです。
これがヒッチコック言うところのマクガフィンで、この巻物を巡ってドラマが展開していきます。

「石丸」になると巻物が龍煙に変更されています。龍煙とは毒ガスで生物科学兵器です。これが開発されると生き物は全部死んでしまうので戦争の完全勝利間違いなし。
敵だけでなく生物全部が死んでしまうあぶないガスです。
核兵器の恐怖を暗示させ、人類の平和のために
石丸は奔走するのです。
「忍者旋風」では竜煙となってますが、基本は同じ。ですが、敵が柳生親子から、服部半蔵になっています。
このように、段階を踏みながら、元ネタから離れていき、白土作品の独自の設定・独自のキャラが生まれ進化していっているのがわかります。

 

異彩放つキャラクター二年ね太郎の魅力

【甲賀】で特に独特の存在感を放つキャラが「二年ね太郎」です。
のちに「小学二年生」に連載された「2年ね太郎」と名前は同じですが、キャラや設定は別ものです。
二年生版のね太郎は風貌は後のサスケに近く、いたずら冒険好きな性格です。
どちららというと初期の作品によく登場【太郎】という少年に近いです。

ところが【甲賀】の二ねんね太郎は、神仏や仙人の化身のような不思議な力を持ち、しかも人間をいい方に導くことができる指導者的側面ももっています。

欲の塊のような霞のおばばを善人に改心させ、人間本来の生き方に導いていいきます。

「剣の道で強くなる……」
その執念で凝り固まった忍者疾風小僧。自分を破った薩摩の忍者剣風を倒そうと修練しますが、剣風はあっさ柳生宗矩に敗れてしまいます。
今度は宗矩を倒すために、催眠術のような技を身に着けます。
その技でついに、宗矩倒すことができました。

しかしその様子を見たね太郎が霞のおばばと対決することをすすめます。
ね太郎の薫陶を受けたおばばに疾風小僧の技は通じませんでした。
技巧を凝らしても、純粋無垢な存在には勝てないという象徴でしょうか?

つまり宗矩より疾風小僧の方が強く、疾風小僧よりおばばの方が強く、そのおばばを指導したね太郎はもっと強いことになり、この作品の中では絶対無敗の存在なのです。ね太郎の素性が分かるのは物語の終盤になってからです。

「石丸」では「甲賀」の半分の分量しかないので、ね太郎の活躍はわずかです。鳥を操って空を飛べるくらいで(これだけでも他の忍者を圧倒する技だけど……)ね太郎の能力は発揮されずじまいでした。

「忍者旋風」ではね太郎や霞のおばばは登場しません。
絵柄も大人っぽくなり、だんだんハードな路線に転換しようとしていますので、牧歌的で昔話よりなね太郎のキャラはだんだん作風に合わなくなってきました。

これからさらに「忍者武芸帳」で白土作品はさらなる進化を遂げるのです。

「忍者武芸帳」「カムイ伝」に通じる複数のキャラクターの魂の遍歴

白土漫画の長編の魅力はたくさんのキャラクターが入り乱れて、経験を通して、考え方生き方が変わっていくところでしょうか?
それはキャラクターが金太郎飴のように終始一貫変わらないのっぺりしたエンタメとは一線を画します。
どのキャラクターも物語の中を生きていて、常に変化成長をしているのです。

たとえばちょこっと登場する「宮本武蔵」
彼も細川藩から密命を受けて甲賀武芸帳を探す旅に出ています。
彼も剣の道で頂点を極めるために修行をしているのですが、ある日白人の拳銃使いジョーと対決。拳銃には手も足もでない武蔵。
こんなものができては剣を磨いてもしょうがないとあっさり剣の道を捨ててしまうのでした。

欲望のままに生きてきたかすみのおばばも改心して、悪の権化越後屋と対決して刺し違えます。

自分が勝つためならば回りの人がどうなってもかまわない疾風小僧も自分が怪我を助けられたことがきっかけで、思いやりのある人物になっていきます。
しかし最後はジョーの銃弾に倒れ「忍者の時代は終わった」と言い残して石丸の胸の中で息を引き取るのです。

まとめ

ま、いっかけん
すっかり、白土ワールドの術中にどっぷりはまって、全作品制覇したくなっちゃいました。

 




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