
ウォーキング・デッドを遅ればせながらやっと見てます。
ゾンビが出てくることでちょっと、躊躇してたんですけど、
「もっと早く見てりゃよかった」
と覆ってます。ゾンビよりも人間ドラマがおもしろいんですよね。
私と同じように「ウォーキング・デッド」が大好きな方におすすみしたい映画「マタンゴ」です。
◎目次
SFホラー映画の原点東宝特撮映画『マタンゴ」
「マタンゴ」は1963年に東宝で製作されました。同時上映は「海の若大将」加山雄三さん主演です。明るく楽しい東宝カラーを代表する若大将シリーズ。同時上映で、しかも同じ海が舞台の映画なのにこの毛色の違い。また円谷英二特技監督がかかわった特撮SF映画ともまた一線をかくす作品なのです。
「美女と液体人間」「電送人間」「ガス人間第一号」など、人間が液体や電気などの物質に変身してしまうという変身人間シリーズの番外編です。円谷英二監督とその弟子たちが、人間が物質になるというありえないものを映像として表現することに挑戦しました。
さて本編の【マタンゴ】は菌です。マタンゴの菌に侵されると体中が胞子だらけになり、思考もできなくなって、マタンゴと同化してしまうのです。
孤島に取り残された人にとって、唯一の食べ物でもあり。それを食べると、バケモノに同化してしまう感染源にもなるのが【マタンゴ】の恐怖ですね。
ウォーキング・デッドVSマタンゴ【1】ゾンビ対マタンゴ
今に続くゾンビ映画の先駆けになった「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は1968年で「マタンゴ」より5年後なんですね。
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」によって初めてゾンビ(当時はゾンビという名前もなかった。リビング・デッド【生ける屍】という名前だった)が
【ゾンビルール】
- 死んだ者がゾンビとして蘇る
- 人間を食べ物として襲う
- ゾンビに襲われた者はゾンビ化する
- ゾンビ化したものには理性・感情はない
というルールを確立したと言われています。
ゾンビのルールではないですけど、周囲と隔絶された状況でモンスターから身を守らないといけない。という密室連続殺人的状況設定も確率しています。
しかしその設定マタンゴもほぼ同じなのです。
【マタンゴルール】
島のきのこを食べたらマタンゴになる。
- 人間を襲う。
- マタンゴに襲われたものはマタンゴになる。
- マタンゴになると理性・感情がなくなる。
- 空気感染もする。
そして、マタンゴの場合、漂着した孤島で、周囲と孤立無援の状況でマタンゴに対峙しないといけない。
しかし、比べて見ると、空気感染したり、きのこを食べないと餓死する状況の中で、空腹に負けて食べてしまう毒キノコ。モンスターとしてはマタンゴの方が最強・最凶かも。
しかし、親しい人でも死んでしまうとゾンビ化するというのは、相当ドラマチックな設定です。つくづくよくできています。
密室的状況で最凶のモンスターに襲われる乗組員――で、思い出すのは1978年「エイリアン」これはまだ襲ってくるモンスターがエイリアン一体だけだからよかった。
「マタンゴ」より十数年後の作品ですが、映像やエイリアンの造形は素晴らしかったが、密室の中で人間どうしが欲望をむき出しにする「マタンゴ」より、だいぶ乗組員たちが大人しかった。
ウォーキング・デッドVSマタンゴ【2】人間対人間
この2作の共通点は、やはりモンスターの恐怖より、モンスターの出現によって人間関係が崩れていくという展開。
マタンゴの場合、前述の通り東宝娯楽映画の全盛期の頃ですから、仲間同士が殺し合うというような展開は、タブー中のタブー。特撮映画の枠の中だから許されたのでしょう
しかし姉妹品の変身人間シリーズでも、怪人を倒す時に、警察や自衛隊は協力しあって倒すという暗黙のルールがあります。
現実には、同じ組織でも反目し合うということもよくあることでしょうが、東宝映画はそういう世の中の暗い麺は見せないという姿勢でした。
マタンゴはそんな自主規制はぶっとんで、当時の作品では健全な明るい好青年役しか、キャスティングされなかった俳優さんたちが、喜々として欲望剥き出しの等身大の人間を演じきっています。
「ウルトラQ」で主演した佐原健二さんは、たまたま抜いた歯をそのままにして出演したんだとか。すごい役作りです。
ウォーキング・デッドのキャラクターたちも、まるで現実に生きていそうにリアルな人物設計です。
ずるさ、弱さ、欠点、歪んだ感情がそれぞれあって、それぞれの価値観・思惑が交錯してなかなか思うようにことがすすまない。
迷いながら行動していく度に、どんどん亀裂が深くなって最終的には、のっぴきならない局面にまできている。
これはやはり、有料放送だからこそここまでハードな描写が可能なんだと思います。
そもそも地上波でゾンビドラマが放送可能かどうかはわかりませんが……
ウォーキング・デッドVSマタンゴ【3】常識VS非常識
割と初期の方でいなくなるんですけど、デール・ホーヴァスというお爺さんがいました。
グループ最年長で沈着冷静でグループの相談役てきな存在。ウォーカーに襲われる前の社会だったら、頼れる町内会長さんのようなポジションみんなから敬われて生涯を終えられただろうというようないい人。
しかしウォーカーが闊歩する世界は末世乱世。
常に、正常だった世界の規範を忘れずに正論をふりかざすデールおじさん。
だんだんみんなからうるさい説教爺のように思われて煙たがれるようになります。
そして周囲との軋轢が頂点に立った時、彼は……
んー気の毒な存在。
これは「マタンゴ」において久保明さん演じたたった一人生き残って日本に戻ってきた青年に通じるものがある。モンスターに対して、一般常識の正論は通じないもののようです。
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