「仮面ライダー」シリーズや「仮面の忍者赤影」「隠密剣士」の子供向け活劇シナリオの巨匠伊上勝さんが全話てがけた「妖術武芸帳」を全話DVDで視聴しました。
アマゾンプライムのオプションチャンネルのマイ☆ヒーローにもラインナップされていません。
視聴するためには、DVDボックスを買うしかない……
伊上勝ファンとしては買わずにはおられまい。
誘惑に買われてついついポチってしまいました。
◎目次
「妖術武芸帳」とは?
妖術武芸帳は1669年TBS系列のタケダアワーに放送されました。
タケダアワーは「月光仮面」「隠密剣士」ウルトラシリーズと超大ヒット番組を見出した伝統のドラマ枠です。
隠密剣士で忍術ブームを巻き起こし、忍者を世界にはばたくコンテンツにする礎を作った伊上勝氏が、今度は妖術ブームを巻き起こそうと放った野心作です。
妖術とは中国の道教の道士が行う秘術です。
のちにキョンシーブームを巻き起こした映画「霊幻道士」に登場した道士と根は同じなのです。
ところが当時日本と中国は国交がなく、資料は中国の古い古典からになります。
霊幻道士とは全く違う、仙人のような姿の道人になっています。
残念ながら妖術は受入れられず、13回で打ち切りになってしまいました。
妖術武芸帳ここが残念!
なぜ妖術武芸帳は当時のこどもたちに受入れられなかったのか?
自分なりに分析してみました!
敵の道人たちがみんなムサクルシイ
やはり、敵の道人たちは仙人スタイル、基本長い髪に長いひげ。
どちらかと言うと、当時のヒッピースタイル?
忍者はやはりあの黒ずくめに身をつつんだあの装束が格好いいです。
結局忍者って仮面ヒーローのビジュアルのベースになってるんですよね。
それに対してルーズな仙人スタイルは洗練しているとは言い難い。
「人は見た目が9割」と言いますが、敵キャラもやはり見た目が9割なんでしょうか?
主人公誠之介がちょっと地味……ケレン味が欲しかった!
DVDジャケットの写真を見ての通り、主人公誠之介役の佐々木功さん現ささきいさおさんはものすごくカッコいいです。
日本人離れしたスッキリした目鼻立ちに、すらっとした体型、 これだけのかっこ良い侍姿の人は歴代の時代劇スターの中でもいないでしょう。
殺陣も声もいいし、決め顔も決まっていた。
しかし、実は時代劇の主人公ってどこかキャラ的にアクセントがあるのが定石です。 たとえば、紋次郎は長い楊枝、金さんはいれずみ、桃太郎ざむらいは般若の面と七五調の決め台詞など……
もう少し、キャラ立ちしていれば、時代劇スターささきいさおが誕生していたかも……
素材は抜群なのに、実に惜しいです。
しかし、この作品が成功していたら、のちのアニメソングの大王は存在しないので、贅沢は言ってられないですね
変身がない! 怪人・怪獣が出てこない
1669年は既に、「仮面の忍者赤影」が登場しており、ヒーローは仮面をしていたり、敵が仮面を被っている怪人が多くなっています
それに比べて、「妖術武芸帳」は敵も味方も地味な気がします。
「隠密剣士」で満足できていた子供たちよりも、はるかに派手好みになっていたのでしょう。
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」が放送されていた時間帯ですからね。
「いつ変身するんだろうなあ」と子どもたちはやきもきしていたかもしれません
勝手にテコ入れ「妖術武芸帳」
歴史にもしはありませんが、もし「妖術武芸帳」をテコいれしてたら、人気ドラマになっていたかも……
てなことで、勝手に「妖術武芸帳」にテコ入れします。
伊上勝先生 、ゴメンナサイ……
敵の道人をムリヤリ全員女性に!お色気路線に変更
むさくるしい、おじいちゃん、おじちゃんばかりだった道人を、全員女性に変更……
仙人のような服ではなく、スリットの深く入ったチャイナドレスに……
誠之介を色仕掛けがブレンドされた妖術=催眠術で翻弄します
すっかり、タケダアワーには似合わない大人番組になってますね。
そう、ひょっとしたら、妖術はもうちょっと年齢層が高い方に受けてのかなとも思います
誠之介にキャラ立ちを!
ツルンとした二枚目ぶりの誠之介。
それをキャラ立ちするために色をつけたい!
木枯し紋次郎が登場するのはこの後、数年後です。
それに先駆けて、ささきいさおさんが声を担当した、ガッチャマンのコンドルのジョーのようにニヒルなテイストを付け加えてはどうでしょうか?
妖術には妖術をもう一ひねり
妖術武芸帳のクライマックスは道人の妖術にはまり窮地に陥った誠之介が、
なんらかのきっかけで妖術を打ち破って、道人を倒すのが定番です
誠之介自体は普通の剣士なんで、刀しか使えません。
それを、仮面の忍者赤影のように、敵の妖術をさらに打ち破る妖術で倒してくれたら、
面白かったかも……と思いました。
妖術武芸帳の不人気を踏まえた、後番組はあの大ヒット作品だった!
「妖術武芸帳」が3か月で打ち切られた後に始まったのがあの「柔道一直線」でした。
地獄車、真空投げ、真空二段投げ
変身はしないけれど、現実では不可能なアクロバティックな必殺技の数々。
そして、敵の技を打ち破る技が次々と登場していきます。
変身しないヒーロー番組の最適解はこれだったのかもしれません。
翌年には「仮面ライダー」がスタートして、伊上勝氏の真骨頂が登場します
のちに「隠密剣士」もリメイクされますが、オリジナルほどの人気は出ませんでした。
「妖術武芸帳」は大きく変貌する、特撮番組の過渡期に登場した作品です。
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