「仮面ライダー」「仮面の忍者赤影」の天才脚本家伊上勝の処女作「遊星王子」の魅力

ま、いっかけん
私は1968年生まれで「仮面ライダー」や「帰ってきたウルトラマン」の世代です。ヒーローものではウルトラマン以前以後、仮面ライダー以前以後と言った言われ方をするくらい、それ以前のヒーローものが再放送されたのはごくわずか。取り上げられたのはかって三宅裕司さんが司会だった「テレビ探偵団」で断片が紹介されたぐらい。完全に過去のものでした。最近になってやっとソフト化され、ようやくその全貌を確認できました

伊上脚本術は既に「遊星王子」で完成していた

この本を読んで改めて、子供の頃にみたヒーロー物で大きな足跡を残した人だと認識しました。

伊上勝さんは「月光仮面」に続くヒーロー番組の原案の公募で見事優勝。デビュー作がいきなり連続ドラマの原作で脚本も手がけます。

遊星王子を見ると、あれこの話はどっかで見たようなというデジャブ感に何度も襲われました。それは既に「仮面ライダー」シリーズや他の特撮シリーズで伊上勝さんが開発したドラマのパターンを何度も踏襲してからだということに気づきました。

設定は面白い! けど技術がついていってない!

テレビ版「遊星王子」のおもな能力は

  • 壁抜け・瞬間移動
  • サイコキネシス

「壁抜け」なんですけど、誰もいないはずの部屋に突如登場。ちょっとした編集で簡単にできちゃいます。なぜか登場した時には幽霊が出てくるような効果音が……ちょっとチグハグ。なにせ国産テレビ映画初の宇宙ヒーローなので、試行錯誤がうかがえます。

「サイコキネシス」遊星王子がクロスしていた両腕を開いて気合を入れると敵の銃がパッと空中に飛んで、アッというっ間に戦闘不能。

これは人気だった「赤胴鈴之助」の真空斬りやのちの「少年ジェット」のミラクルボイス級の無敵の必殺技ですな。なにせ武器や戦闘なしであっと言う間に敵を全員倒せちゃうんだから。

宇宙人・海底人のフォルムが悲しい

遊星王子自体のユニフォームもそうですが、敵の宇宙人・海底人・ロボットの姿もちょっと残念です。円盤やロケットもいかにもちゃちな感じです。それは予算がすこぶる安く。製作の宣弘社は広告代理店で、映画会社のセットや技術が使えなったからだと思います。「電気紙芝居」と揶揄されたのもうなずけるほどのしょぼさは否めません。

1958年以前の映画では「地球防衛軍」「宇宙人東京にあらわる」など既に世界上映されるレベルの作品が作られていました。それに比べるとあまりにも差がありすぎました。
再放送されないのも無理ないなあと思います。

しょぼい映像・技術を補う「声」の力

夜間撮影の時には光量が足りないのか、ピンぼけの映像もちらほらあります。
それだけ不明瞭な映像も多いのに、なぜか役者陣の声だけは明瞭でよく通っています。

主演・遊星王子の三村俊夫さんはのちにワイドショーの名物レポーターで活躍しました。これも声が明瞭ではっきりしていて印象的です。それが正義の味方の正しさ明るさを表していました。

対する悪役のキャストも後に声優として活躍する大塚周夫さんや、数々のドラマ・映画で悪役で登場した嵯峨善兵さんなど声が通る声で作品を支えてますね。

もう1人の東映製作「遊星王子」梅宮辰夫版は別物

東映作梅宮版「遊星王子」は全く制作会社・キャストがまるっきり違うので全然テレビとは別作品だと思って下さい。こちらはさすが東映の製作なので、特撮やコスチュームはやはりテレビに比べ豪華です。

神エピソード第3部「大空魔団」は既にウルトラマン・ウルトラセブンを超えていた

第3部は放射能の研究をする若き科学者が強盗・殺人の罪を着せられ、警察から逃れて逃走するお話から展開。まるで後の大ヒットドラマ「逃亡者」のような話ですが、「逃亡者」より4年も前に先駆けをやっています。そのえん罪事件を発端に、宇宙をまたにかけた大争奪戦が展開します。

特撮やコスチューム・メカは見劣りを上回る先が読めない「この後いったいどうなるんだろう」というストーリー展開で、ぐいぐい視聴者を引っ張っていきます。稀代のストーリーテラーの面目躍如ですな。

これまで「まぼろし大使(宇宙人)」「海底人」と戦ってきた遊星王子。第3部で戦うのはタルタン(バルタンじゃないよ)人。度重なる宇宙戦争で自らの星が破壊され、住めなくなってしまい、他の星を侵略する以外にない設定。んー、設定までバルタン星人そっくりです。博士が発明した放射能の理論を記した5冊の本をめぐって、地球の強盗団スリーダイヤと、宇宙上で200年間戦争を繰り返してきた天敵のメトー人(メトロン星人じゃないよ)など入り乱れての奪いあい。まるで米ソの冷戦の構図そのもの。

当時の人気小説五味康祐作「柳生武芸帳」をそのままSFに展開したもの。以降、伊上作品はバラバラになったアイテムを探し集める展開がストーリーの骨子となっていきます。

のちにガンダムやスタートレックDS9などで描かれる戦争に正義があるのか? というドラマが既に始めての宇宙人ヒーローのドラマで既に描かれていたんですね。しかも完全な娯楽作としておもしろさを保ちながらです。

「遊星王子」を見るまでは「ウルトラマン」が先駆けだと思っていたのですが、完全に固定観念が覆されました。すごいぞ「遊星王子」すごいぞ「伊上勝!」

悪対悪の対決。「用心棒」も既に先駆けていた。

その後の展開がまたすごい!なんと盗賊団スリーダイヤとメトー星人は結託して、堀田博士の弟や遊星王子といつも靴磨きをする少年少女を人質に堀田博士の発明の秘密が書かれた本の入ったトランクを要求。一方、タルタン星人は直接、太平洋上に核爆弾を落として、堀田博士のトランクを渡さないと核爆弾を世界中に落とすと脅します。

両方から人工放射能の秘密を要求された遊星王子。果たして遊星王子がとった行動は……結末は見てのお楽しみとして、遊星王子は月を取引場所にしてタルタン人、メトー人を同時に呼び寄せます。

黒澤明監督「用心棒」に先駆けること2年。こんな斬新なアイデアを特撮テレビ映画の方が先にやっていた。しかもこれがデビュー作。天才過ぎます伊上勝。

「豹の眼」「快傑ハリマオ」へと続く東南アジア路線の発端?第4部「魔境黄金洞編」

宇宙の200年戦争を描いた第3部。第4部ではガラッと路線変更。東南アジアの秘密を持った3つの宝石を巡って、バラモンの邪教集団と日本のギャング団ブラックハートと対決。

宇宙路線はやはり特撮のショボさが目立ちますが、アジア路線に変わって、遊星王子は今までの鬱憤を晴らすように大暴れ、悪者を徒手空拳でバッタバッタとなぎ倒します。いつの間にか、壁抜けやサイコキネシスは全くやらなくなりました。

もともと、遊星王子の構えや技は明らかに古流空手や古流柔術系の動き。宇宙人らしからぬどっしりした腰がまえでたくさんの敵を捌いていきます。が故に、ますますそのタイツ姿に違和感が出てきます。ヒーローが宇宙人である必然性が全く無いのです。

スタジオ撮影ができないのを逆手にとったオールロケ撮影はリアル感と迫力を出します。しかも、さすが同じアジア人のせいかアジア系のコスチューム・メイクしても全然違和感がありません。(現地の人から見たらあるかも知れませんけど)

第4部が放送される前、2018年5月に東映版「遊星王子」が上映されました。 これは私の妄想ですが、 ひょっとしたら映画版を見たテレビ版スタッフがあまりの映像表現のレベルの違いにショックを受け、宇宙を舞台にするのを諦めたのではないかという気がします。

今までの苦労はなんだったの? という位、宇宙っぽさを捨てたら毎回迫力あるアクションが楽しめる娯楽作になっていました。で、残ったのは最大の違和感・主人公の遊星王子の存在のみ。同じ頃、東映製作で「七色仮面」で宇宙からやってきた設定、翌1960年には同じく東映製作で「ナショナルキッド」が登場。当時のテレビでは本格的な特撮が行われました。

ということで、宣弘社製作のヒーローものは宇宙路線は諦め「豹の眼」「快傑ハリマオ」とアジア路線に舵を切りました。その後は「隠密剣士」で時代劇に路線を変えていくのです。

おまけ・豆知識集

靴磨きの少年は月光仮面とかけもちだった!

遊星王子の地球上での仮の姿ワクさんと共に靴磨きに励む少年誠少年マコちゃんは月光仮面と掛け持ちで出演していた。その他月光仮面は同じ宣弘社で製作だったので、同じキャストが多数掛け持ち出演。人材が少なかったんでしょうね。

マコちゃんよりちょっと年上のお姉さんで同じく靴磨きの少女君子は第3部まで早ミチコさんが演じています。しかし小柄ながら明らかにこの方は大人。無理やり少女役をやらされている感じ。第4部でやっと年相応な村越伊佐子さんに交替。キャストの頻繁な交替は月光仮面でも行われていたようです。

その他、部が変わるごとに同じキャストが違う役で何度も登場。映画界と真逆でテレビ界はとかく人不足だったようです。

まとめ

デビュー作「遊星王子」以降、伊上勝さんは30年以上の長きに渡ってヒーロードラマの脚本を描き続けます。晩年の頃は「書かなくなった」と言うよりも「書けなくなった」と言う方が正しかったようなのですが、自らのドラマ作りにに飽きてしまったのかなあという気もします。

見る方はその毎度おなじみが嬉しいのですが……

遊星王子はDMMで全巻レンタルいたしました。




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